単行本2巻の182ページ、一度カカシに倒された再不斬を連れ帰った白が初めて素顔を見せる場面で、 再不斬が白に対し、「仮死状態にするならわざわざ首の秘孔を狙わなくても…もっと安全な身体のツボでも良かっただろうが…」 と言っています。
果たしてこの「秘孔」(ひこう)とは一体何なのでしょうか。何の前触れもなく突然このような専門用語が飛び出してきて、困った読者も多いと思います。 まず再不斬の言うように、「身体のツボ」を表しているのだろうと推測できます。
確かに、中国に伝わる鍼灸や気功といった東洋医学には、人体に存在する「経穴」(けいけつ)、「経絡」(けいらく)と呼ばれるツボに気を注入することによって治療などを行うことができる とされています。 ですが、鍼灸や気功においても、「経穴」や「経絡」という言葉は使われても、「秘孔」という言葉は普通使われることはありません。
実際に私の使用しているパソコン(執筆当時、WindowsXPのMicrosoftのIME)でひらがなで「けいらく」、「けいけつ」と入力して変換すれば、一発で「経絡」、「経穴」と変換されますが、 「ひこう」と入力しても「飛行」や「非行」、あるいは「轢こう」などとは変換されても、決して「秘孔」と変換されることはありません。
なんとしてでもこの「秘孔」の謎を解きたい。そう思った私は調べに調べた結果、ある文献にたどり着きました。その文献のもっとも古いタイプは27つに分かれており、「秘孔」という言葉が出てきたのは1番目の文献で、革ジャンを着た眉毛の太い筋肉隆々の男が、軽く2メートルはある巨大なモヒカン男を殴り倒すのを見た老人のセリフが初めてです。以下、そのセリフを引用します。
その昔………
中国より伝わる恐るべき暗殺拳があったときく…
その名を北斗神拳…
一拳に全エネルギーを集中し肉体の経絡秘孔(ツボ)に衝撃を与え表面の破壊よりむしろ 内部の破壊を極意とした一撃必殺の拳法!
やはり秘孔とはツボだったようです。
にわかに信じがたい話ですが、殴り倒されたモヒカンは、革ジャン男に「おまえはもう死んでる」と捨て台詞を吐かれた直後、 頭が裂け、体からは内臓が飛び出して、老人の言葉どおりに内部から爆発しました。
さらに同じ1番目の文献では、その北斗神拳の使い手ということが判明した眉毛の太い男が、先とは違うモヒカン男のこめかみに指を突き刺し、「これは七百八ある経絡秘孔のうち頭維(四合)といってな、この指をぬいてから3秒後にてめえは死ぬ」 と脅している場面も発見しました。これもただの脅迫ではなく、男の言ったとおり、なんとモヒカン男は「死にたわっ」という遺言を残し、身体が縦に裂けて死亡。
以上のことから、「秘孔」は正式に「経絡秘孔」というツボの一種で、人体に708個あることがわかりました。
さらに文献を読み進めると、錯乱状態の少女を落ち着かせたり、失われた視力を取り戻したりと、なにも爆発させる秘孔だけではないということもわかりました。白が千本で狙ったのは、708個の秘孔のうち、仮死状態にする秘孔だったんでしょう。
本当のところ・・・
秘孔はNARUTO以前にジャンプに連載されていた名作漫画、「北斗の拳」でよく使われていた言葉で、 一般的な単語と思った岸本氏が、ついうっかりナルトにも出してしまったというのが本当のところじゃないでしょうか。