デイダラの口調について

珍妙な髪型と語り口で、我愛羅を殺害した悪役にもかかわらず一躍人気キャラの一人となったデイダラ。 デイダラといえば一人称は「オイラ」で「…だな…うん。」という口癖がまず思い浮かぶでしょうが いつの間にか、さほど「うん」を付けないようになり、一人称の方は「オイラ」から「オレ」になってしまいました。

実は漫画において、キャラクターの口調が登場時と段々違っていくのはよくあることで、 NARUTOにも影響を及ぼしていると思われる名作「北斗の拳」に登場する名悪役、ラオウも初登場時の 一人称はなんと「わたし」でした。あの拳王様がですよ!? その後「わし」を経て、最後は「おれ」で定着し、彼の存在自体、終盤では 神格化されていったことは承知の事実。

…とまあ北斗の拳の話はここまでにしておいて、

シルエットですがデイダラが初登場時した単行本27巻から、カカシとナルトに 倒され、自爆分身で逃亡した31巻までのデイダラの発言をたどってみます。

まずは暁のメンバーが集合した第一部最後の場面、「焦んな…うん いずれ大蛇丸はぶっ殺す…うん そいよかあと三年しかねーぞ…全員ノルマ達成 できんのかい…うん?」

なんとわずか一コマで三度も一言ごとに「…うん」と付けています。

次に、「第二部」に入って本格的にデイダラとサソリが登場するシーンと比べてみます。

「そうか… 大蛇丸んとこにやった奴よりこっちが先か…うん」

やはり「…うん」だが、27巻の口調なら「焦るな…うん」と言うぐらいだから「そうか…」にもうんをつけていたはずです。 その先のコマを見てもわかると思いますが、微妙に「…うん」の数が減っています。

見せ場の我愛羅との戦いが見られる28巻。例えば

「オイラの術は全て芸術だ… それにちゃんと十八番も持ってきてる …うん」

という台詞。おそらくこのタイプの口調の印象が一番強いんじゃないでしょうか。

出番のない29巻を飛ばして30巻のナルトたちと対峙する場面。

「あの"人柱力"はオイラがやる うん」

この辺りまでは「オイラ」だったが、「うん」のほうは「…」があるなしが五分五分位になっています。
さらに進むと鳥居の上にたつカカシとナルトに向かって

「オレなんか相手にしてていいのか?うん?」

ついに一人称が「オイラ」から「オレ」へと変わってしまいました。 ナルトたちと戦う直前の台詞では、

「我愛羅は一尾を抜いたから死んだ お前もじきにそうなるんだよ コラ!」

もはや「うん」すらなくなっています。

続いて自爆したと思わせた31巻。やはり最初に比べれば「うん」の数は少なくなっており、 一人称も、「オレの究極芸術を見せてやろう」と「オレ」のままです。

そして時は流れて37巻。飛段にナルトのことを忠告する場面では、2コマだけの出番ですが2コマとも 「…うん」 が付いています。

結局この後デイダラは40巻でサスケと戦い、散々サスケの引き立て役になった上、自爆して果てるのですが、 このサスケ戦のときは岸本先生が気づいたのか、なぜか一人称が初期の「オイラ」 に戻っていて、これでもかというほどそれが強調されているように思え 、力押しの戦い方と合わさって頭が悪くなったように見えてしまいました。

別に「オレ」のままでも良かったんじゃないでしょうか。逆に違和感を感じました。

どうもその前に登場したサスケの「蛇」のメンバーは狙いすぎているというか読者に 媚びすぎているような気がして個人的に好きになれませんでしたし、あれほど物語を動かしてきた大蛇丸があっさり やられるなど、今まで築かれていたNARUTOの物語のバランスがさらに崩れてきたようで、デイダラも その煽りを食らった形になったいうことでしょうか。

最初に書いたとおり、悪役なのに憎めない、いいキャラをしていたのに残念なことです。

合掌。

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